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治験翻訳演習担当講師
東京医科歯科大学非常勤講師
アルパ・リエゾン株式会社代表

有馬貫志





《第9回》 完璧な翻訳って?
春学期の講座開始から4回が過ぎ、全体の3分の1が終わりました。今週末から木村先生の講義が始まります。演習はその間休みとなりますので、担当者としてはつかの間の休息です。というわけで、今回の治験翻訳EXPRESS!では、完璧な翻訳ってどんなものか、考えてみましょう。どうしたら完璧な翻訳ができるのでしょうか?例えば実務翻訳と文芸翻訳ではそのイメージはずいぶんと違っているでしょうね。ここではあくまで治験翻訳で考えます。

あなたがチェッカーまたはレビュアーであったら、納品された翻訳の品質チェックをどのようにするでしょうか?

最初の基本は、数字と翻訳抜け、そして書式の統一のチェックでしょうか。治験文書では膨大な数の数字が使用されますが、それらはすべて最重要データです。数字と一緒に使われる単位も同じですね。翻訳抜けも厳禁です。次は訳語選択の妥当性のチェックです。英語と日本語の意味が同じでも、コンテクストによってその妥当性は大きく変化します。訳語選択の妥当性を判断するには、治験のさまざまな知識が必要となります。

ここまでは単語レベルのチェックでした。次は文と段落レベルでの意味内容に関するチェックです。誤訳はないか、意味内容に矛盾はないかをチェックし、必要ならリライトをします。内容に問題がなければ、さらに日本語としての読みやすさや文体の妥当性を調整し、必要であれば訳注を加えます。ここまでして始めて商品として完成しますから、晴れてクライアントへ納品となります。  

でも、商品として完成した翻訳は「完璧な翻訳」と呼べるでしょうか?多くの翻訳者がNOと答えるのではないでしょうか?納品レベルの翻訳は、ある意味95%なのではないかと、僕は感じています。100%の翻訳は砂漠に浮かぶ蜃気楼のようなもの。追いかけも追いかけてもたどり着けない。もしかしたら、100%の翻訳なんて幻想でしかない。ベテラン翻訳者ほどそれが分かっているのかもしれません。

つーほんメール【第93号】2006年6月21日発行より転載