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治験翻訳演習担当講師
東京医科歯科大学非常勤講師
アルパ・リエゾン株式会社代表
有馬貫志
《第6回》 書く力の重要性
先週の土曜日、イカロスビルの10階で治験翻訳講座基礎クラスの最初の授業が行われました。教室の窓からは近くを流れる神田川がよく見え、川岸の新緑が疲れた頭をリフレッシュしてくれます。授業は机をコの字に並べ、対話型ですることにしました。1日4時間もの演習なので、その時間を共有する仲間を信頼し、リラックスして自分をさらけ出せる環境がなにより大切ですからね。
基礎クラスに参加してくれた方は、ある意味とても贅沢な時間とお金の使い方をしています。なぜなら、翻訳の基礎を学ぶことは、翻訳者にとって最も大切な「書く能力」を学ぶことだからです。翻訳者に必要な技量は、専門知識、読む力、書く力、ビジネススキルの4つですが、これらの技術がすべて一定のレベルに達したとき、他と一線を画す翻訳者になれるか否かを決めるのは書く力なのです。書く力を持つことは、翻訳に限らず人間のすべての知的な活動の基盤となる技術を持つことです。そう考えれば、まさに「基礎」に立ち戻って、自分の知的創造性に投資しているといえますね。
日本語のネイティブスピーカーは、日本語の構造には無知で無関心です。それでも日常生活で困らないことが、ネイティブスピーカーの生得的特権なのですから、それでかまいません。ただし、それが許されるのは一般的な話し言葉だけです。書き言葉は生まれつきの能力ではありませんから、トレーニングが必要なのです。
演習の授業は作業主体の参加型です。黙って説明を聞いているより、演習問題を解いたり、質問に答えたりする時間が長く、お昼を挟んで4時間の授業はあっという間に過ぎてしまいます。それでも教室の授業だけではなかなか自由に話せないので、クラスの後、近くのカフェで気軽なおしゃべりの時間を持っています。そこでこんな感想が聞けました。「先生、翻訳って、一語一語忠実じゃなきゃいけないから、必ず逐語訳をするんだって思ってました。でも、そうじゃないんですね!」。これって本質的な問題ですね。皆さんも考えてみてください。忠実な翻訳とは何に対して忠実であるべきなのでしょう?単語ですか?クライアントですか?それとも自分の信念ですか?答えは「言語伝達の構造」の中にあります。「そ ういうこと考えるのって楽しそう!」って思ったあなた。治験翻訳講座でお会いしましょう!
つーほんメール【第89号】2006年4月21日発行より転載
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