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この連載は、メールマガジン「つーほんメール」のバックナンバーです。
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治験翻訳演習担当講師
東京医科歯科大学非常勤講師
アルパ・リエゾン株式会社代表

有馬貫志





《第32回》 形から入って大丈夫です
前回のメールマガジンでは英語のプレゼンテーションの重要性についてお話しました。実はプレゼンテーションの重要性は日本語でも同じなので、今回はもう少し範囲を広げて話したいと思います。少し前、巷に使われている表現で「形から入る」というのがありましたね。例えば、「これからゴルフを始めたいんだけど、ほら、わたしってなんでも形から入りたいタイプだから、クラブとファッションだけは、やっぱ一流ブランドよね」なんていうあれです。

未知の分野で仕事をしなければならないときに、最低限見た目の不自然さをなくすというのは、極めて自然な考え方です。治験翻訳の世界では、見た目の自然さを損なうのは、治験のレギュレーションに関わる基本的な用語の使い方の間違いです。例えば治験総括報告書(CSR)の翻訳をしていると、その最初のページには、Title of Study、 Investigator、 Study Center、 Phase of Development、 Primary Objectiveなどといった決まった用語が必ず登場します。これはプロトコールや治験総括報告書の書き方に一定の決まりがあって、どの治験でもそのガイドラインに従って書かれているためです。

こうした決まった表現は、いわばゴルフや乗馬(あるいは渋谷センター街の「ギャル」や「ギャル男」でもいいのですが)にとってのファッションと同じ意味を持っています。つまり「仲間」と「それ以外」を区別する徴表としての機能を持っているわけです。例えばTitle of Studyの訳し方はいろいろ可能ですが、「治験の標題」と訳して始めてその世界の人間として認められるわけですね。あるコミュニティーの中だけで通用する言語体系をレジスターと呼びますが、治験の世界にも単語からフレーズ、日本語の言い回しなどに一定の慣習が存在しています。

ゴルフや乗馬のファッションは専門のショップに行けばすべてを手に入れることができます。では、治験翻訳の仲間に入れてもらうための外見、すなわち「お手本」はどこに行けば手に入るのでしょうか? 先ずは前回取り上げたPMDAのホームページに眠っている、たくさんの資料が考えられますね。その中でも医薬品の添付文書、ICHのガイドライン、承認審査に関する資料などがそれです。治験翻訳のプレゼンテーションを整える第一歩はこうした単語やフレーズレベルの表現からです。いわばプライマリーな資料がすべてインターネットで手に入るのですから利用しない手はありませんね。みなさんもどうぞ「形から入って」治験翻訳を楽しんでください。


◆ お知らせ
JTF(社団法人日本翻訳連盟)では毎月専門家によるセミナーを実施しており、8月開催(8月7日(火)セミナー:14:00〜16:40、懇親会<希望者のみ>:17:30〜19:30)のセミナーには有馬さんが講師として立ちます。一般の方の参加も可能なので、どうぞふるってご応募ください。
詳細はこちら⇒ http://www.jtf.jp/jp/east_seminar/east_top.html#0703

つーほんメール【第119号】2007年7月22日発行より転載