この連載は、メールマガジン「つーほんメール」のバックナンバーです。
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治験翻訳演習担当講師
東京医科歯科大学非常勤講師
アルパ・リエゾン株式会社代表
有馬貫志
《第31回》 プレゼンテーションの重要性
前回のメールマガジンでもお話しましたが、PMDA「独立行政法人 医薬品医療機器総合機構」の翻訳担当の方々との勉強会が実現しました。午前中と午後それぞれ3時間、計6時間の長丁場でしたが、率直な意見を伺うことができ、大変有意義な時間でした。この勉強会の提案に快く応じてくださったPMDAの関係者の皆様に、この場をお借りしてお礼申し上げます。
今回はこの勉強会で確認された問題点の中からいくつかお話したいと思います。当日の参加メンバーに、医薬品の承認審査業務と共にPMDAの重要な役割となっている、ICH「日米EU医薬品規制調和国際会議」の担当者の方がいらっしゃったのですが、実際の会議の様子なども含めお話を伺ううちに、日本、欧州、米国の三極のうち、日本だけの問題、すなわち言葉の問題が浮き彫りになりました。欧州と米国に対する言葉のハンディキャップについては、すでにずっと前から分かっていたことで、なんだいまさら、とお考えの方も多いでしょう。
しかし、重要なのはこの問題に関して当事者である日本側がきちんと理解し対応をしていないということです。それは決して、例えば議論の場で第二言語を使わなければいけない、というような個別的な問題に限ったことではありません。むしろこの問題の本質は、プレゼンテーションの重要性を認識している人間がまだまだ少ないというところにあります。現在の世界の共通言語が英語である以上、いわゆる「グローバル」な属性を持つすべての組織では、英語による情報のプレゼンテーションが必須となっています。提示している情報の内容は良くても、プレゼンテーションの質が伴わないばかりにずいぶんと損をしている、というのが多くの現状ではないでしょうか。
英語でのプレゼンテーションの質を高めていく上では、どうしてもドキュメント作成の慣習や、書き手と読み手の関係に対する認識の問題など、英語による表現の方法全体に関する歴史的、文化的な知識が不可欠になります。そうしたすでに確立された慣習や様式の中から、地域特異的でなく、言葉の真の意味でグローバルであるものを抽出し、これを基本とした「日本における英語表現の標準」を確立していく必要があります。それは大変な仕事ですが、避けては通れない道です。おそらく翻訳者は、こうした問題を最も敏感に感じ取っているはずです。そういう意味では、翻訳者は時代の先端でその行く先を見つめているのかもしれませんね。
つーほんメール【第118号】2007年7月6日発行より転載
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