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治験翻訳演習担当講師
東京医科歯科大学非常勤講師
アルパ・リエゾン株式会社代表

有馬貫志





《第19回》 治験翻訳とコミュニケーション
あけましておめでとうございます。新しい年の最初の治験翻訳EXPRESS!、最初に取り上げたいテーマは「治験翻訳とコミュニケーション」です。コミュニケーションという言葉、誰でも日常的に使っていますね。コミュニケーションが十分ではなったから改善しましょう、などと使う場合には「話し合いによって意思をよく通じるようにする」といった意味ですし、大手通信関連企業の名前に使われているように、人々のつながりをもたらす手段といったイメージも定着しています。

治験翻訳とコミュニケーション、一見距離がある概念のようにも思われますが、実は本質的に同じ根を持つ仲間です。その理由は簡単、翻訳は言語による伝達によって成立しているものだからです。言語の2大機能は表現と伝達ですが、治験翻訳で扱う言語の機能はほぼ 100% 伝達にあると考えていいでしょう。また、翻訳とはひとつの言語から他の言語へ変換する作業ですから、書き手から読み手という伝達の流れの中で、読み手拡大の役割を担っていると考えられます。

治験翻訳で扱う情報は薬の安全性や有効性に関するさまざまな資料ですが、そのような情報を伝達してゆく行為は、英語ではファーマシューティカル・コミュニケーションと呼ばれ、メディカル・コミュニケーションというより大きな枠組みの中の一分野であり、またメディカル・コミュニケーションは更により広範なヘルス・コミュニケーションという領域の一分野として捉えることができます。

これらの医療に関するコミュニケーションの概念は、まだまだ日本に定着していると言いがたい状態ですが、日本の医療全体の質の向上、患者さんの利益の増大にとってはとても大切な概念です。これらの言葉が社会に浸透し、医療者と医療を受ける人々が共有することで、福祉全体の向上を促進することができるからです。やや大きな話になってしまいましたが、誰しも自分のしている仕事に意義と誇りを持ちたいもの。幸い治験翻訳者がそのことで不足を感じることはなさそうです

つーほんメール【第106号】2007年1月10日発行より転載